人の感情と理性にささるマーケティング ノマドマーケター at NY
わかっていてもひっかかる2つのキーワード

"人間は利得よりも損失の方が2倍強く感じる"
1つ目のキーワードは行動経済学です。これらのマーケティング戦略にはダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって提唱された理論である"損失回避性 "が巧みに利用されています。
損失回避性とは、
"人間は利得よりも損失の方が2倍強く感じる"
※『ファスト&スロー(上・下)』ダニエル・カーネマン[著],村井章子[訳],早川書房,2012年
私の場合、「今私のメルアドを登録しなければ、15%オフで買えなくなってしまうかもしれない!しかもこの特典、48時間以内にきえちゃうー!」「◯◯時間後のサイバーマンデーセール終了までに決めないと、60%オフの機会を失っちゃう!」「せっかく20%オフクーポンがあるんだから、使わなくっちゃもったいない」という損失回避性の行動をとるよう、これらのオンラインマーケティングやクーポンに促されてしまったわけです。
※2019年のデジタルマーケティングのトレンドを紹介しているウェブ記事でもAIとともにメールでのプロモーションは、未だトレンドの一つとして取り上げられています。
今だけ、ここだけ、あなただけ -具体的かつ時限的な特権の提示
2つ目のキーワードは低コンテクストです。アメリカはご存知の通り、移民の国です。様々な人種、国籍の人が集まってできている国です。自分から声をあげたり、話したりしないと、存在すら認めてもらえません。渡米前に私が試してみた英会話レッスンでは、「君の意見は分かるけど、その意見を支持するような、もっと具体的な経験や事例を必ず2つ、3つは説明しないとわからないからね!」と口すっぱく言われたことを思い出します。ほぼ同じ国民からなり、様々な文化や前提を共有している日本と異なり、とにかく、明確に、具体的に、顧客にとってどんなよい特権が獲得できるのかのメッセージを送らなければなりません。その結果、クーポンの具体的な金額や期限の条件が明記され、日本人である私も行動してしまったように、より顧客の損失回避性に基づく行動を促すのではないでしょうか。

公共サービスにも浸透する”見える化”戦略
ビジネスだけではありません。パブリックライブラリー(町の図書館)で本を借りたときにも、そのレシートにこんな記載がされていました。「You just saved $120.00 by using your library.」
なんと、図書館が本を借りることで、セーブできた金額を教えてくれるとは。 ここに2つ目のキーワードの低コンテクストゆえの”見える化”戦略がビジネスだけでなく、公共サービスにも浸透していることが垣間見えます。図書館のサービスがあなたにこれだけベネフィットを提供していますよというメッセージをシンプルかつ明確にレシートに記載することで、公共サービスがどんなプラスの価値やインパクトを生み出しているのかを直接市民に伝えているわけです。
ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回またコラムでお会いしましょう。