NYノマド 第19回 コロナ禍で激しさを増すビジネスサバイバル -ニューノーマルを商機に変えるサービスデザインとは?

20.08.05 06:24 PM By s.budo

混乱続くアメリカ、続々と展開されるニューノーマル

皆さん、こんにちは。

夏真っ盛りのニューヨーク、連日30℃を超す日が続いています。今年の夏は昨年と比較して、激しい雷雨が多いように感じます。


レストランの再開などの経済のリオープンとともに、夏を迎え、ビーチやプール、パーティなどで人が集まる機会が増加していること、そして十分なSocial Distancing(社会的距離)がなされていないことなどが感染増加の原因となっています。


ニューヨーク、ニュージャージー州では、比較的感染者数は落ち着いた状態にあり、屋内での飲食提供はまだ許可されていませんが、レストランでのアウトドアダイニングが始まっています。


続々と新たなニューノーマルが展開され始めています。
写真:個人宅ドライブウェイでのバースデーパーティ、筆者撮影
例えば、先日は娘の幼稚園の同じクラスのお友達の誕生日パーティに誘われたのですが、こうしたパーティはニューノーマル下、アウトドアでやることが増えています。


お友達のお誕生日パーティは、"ドライブウェイ・バースデーパーティ"でした。
一軒家のガレージ(屋内駐車場)前のスペースはコンクリート舗装され、クルマが数台置けるようなスペースになっていることが多いのですが、このスペースをドライブウェイと呼びます。


このスペースを活用して行うバースデーパーティは私たちも初めての参加でした。



写真:バースデーパーティのアイスクリーム・トラック、筆者撮影
ドライブウェイにはアイスクリーム販売のトラックが置かれ、子どもから大人まで、好きなアイスクリームを好きなだけ食べることができる、アイスクリーム・バースデー・パーティでした。

子どもたちはもちろん、夏の暑い最中でのアイスクリームは大人も大喜び、ドライブウェイでアイスクリームを片手に立ち話をしたり、子ども同士で走り回って遊んだりというカジュアルで楽しいパーティでした。


夏の季節はいいのですが、すぐにやってくる冬はこうしたアウトドアパーティはどうなるのか、また季節が変わるとニューノーマルが生まれるかもしれません。



他にも、公共の図書館では、ニューヨーク市内22の公共図書館で、7月13日から"グラブ&ゴー(grab-and-go)"サービスが始まりました。
新型コロナウィルスの影響で約4ヶ月間閉館が続いていた図書館ですが、オンラインで借りたい本を予約し、図書館に行って実際に本を借りることができるようになりました。


ニューヨーク市内の公共交通バスMTAでは、マスクの着用が義務付けられていますが、新たにバス内にマスクの配布ボックスが設置され、マスクを持っていない人は無料で入手し、つけることができるようになりました。


新たなニューノーマルが続々と登場する日々に、コロナウィルスが日常化しつつあることを思い知らされます。

生き残りをかけた進化はまったなしです。


第19回NYノマドでは、「コロナ禍で激しさを増すビジネスサバイバル -ニューノーマルを商機に変えるサービスデザインとは?」をテーマに、子どもを対象にした様々なビジネス、サービスを取り上げ、物理的な店舗での顧客体験を提供することが難しくなりつつあるアフターコロナ環境下でのオンラインでの顧客体験の可能性、価値について考えてみたいと思います。

  • Part1. テーマパークも四苦八苦~ドライブスルーサファリ初体験
  • Part2. 子ども向け玩具店CAMPとコロナ禍 ―オンラインをフル活用した体験の提供
  • Part3. 子ども向けeラーニング市場~豊富なコンテンツ、サービス&アプリ
  • Part4. プレイヤーが豊富なアメリカの子ども向けe-learning市場

Part1. テーマパークも四苦八苦~ドライブスルーサファリ初体験

夏休み真っ只中の今、ビフォアコロナであれば、かき入れ時のテーマパークや子ども向けの施設もコロナウィルスによるパンデミックで苦戦を強いられています。

全米で子ども向けアミューズメント施設兼、ピザなどを提供するレストランを展開するChuck E. Cheeseの親会社が破産申請を行いました

https://www.cnbc.com/2020/07/18/these-restaurant-chains-filed-for-bankruptcy-during-the-pandemic.htm)。

画像:https://www.sixflags.com/greatadventureよりスクリーンショット画面を引用
我が家では、室内の施設や来場者が多い施設を訪問することは避けたいけれども、せっかくの夏休み気分を味わえるようなアミューズメント施設をトライしようと、ニュージャージー州にある、動物園やプールなどの複合アミューズメント施設"Six Flags"が展開する"ドライブスルーサファリ"に行ってみることにしました。


以前は専用のサファリカーでサファリツアーが展開されていましたが、現在は来場者が自分自身のクルマで来場し、クルマに乗車したまま、園内の動物を観ることができるものです。



写真:筆者撮影
チケットはオンラインで事前に購入する形となっており、来場する時間帯を30分単位で選びます。そして事前に予約した来場時間に購入済みのチケットをスマートフォンなどのモバイルで見せ、クルマに乗車したまま、入場します。入場料は1人19.99ドルで2歳以下は無料です。

朝9時30分の来園予約に時間通りに到着すると、すでに車の列が。
入場ゲートの手前には簡易トイレが並び、入園前に事前にトイレを済ませるようになっていました。
入園ゲートでは持参したオンラインチケットをスマートフォンで見せ、チケットのバーコードを読み取ってもらい、そのまま車で園内へゴー。2車線の列に分かれ、そのまま園内を順路通りに回ります。

園内では水牛、ダチョウ、象、キリン、シマウマ、ライオン、ホワイトタイガー、クマなどを観ることができます。ライオンやホワイトタイガーなど獰猛な動物は檻の中に入っており、クルマから檻を眺めるかたちになっていましたが、タイミングがよければクルマの目の前を動物たちが横切るなど、通常の動物園では体験できない、サファリツアーと似たような観覧経験をすることができます。

我が家が訪れた時はクルマの2車線の真ん中にキリンが出迎えてくれていました。
クルマの流れがありますので、停車して観ようとすると、スタッフに進むよう促されますので、ひとしきり観覧した所要時間はおよそ2時間弱ほど。


自家用車から観覧できることで、他者との接触が極力最小化されており、安心、安全が確保されている点は大いに評価したいと思います。が、肝心の体験は、2時間ずっとクルマに乗車して観覧していると、動けない分、なぜか身体的な疲労が大きく感じました。往復の移動時間を含めると4時間ほど車中で過ごすこととなり、長時間車中で快適に過ごせるような工夫がもっと必要だったなと振り返って反省しました。


通常の動物園であれば、1回チケットを購入すると、開演時間内はずっと園内で過ごすことができますが、このドライブスルーサファリは、クルマで一通り道順に従って回ると終わりになりますので、意外と顧客の回転率が高く、悪くない収益モデルが組めるのかもしれません。

オンラインで顧客体験を刷新 
-苦戦するリテイル、閉鎖が続く物理的店舗とアフターコロナに商機を見出すオンラインサービス

さて、今回のコラムの本題に入りたいと思います。



ニュージャージー州に昨年10月にオープンし、今年の1月にショッピングエリアの一部がオープンしたAmerican Dream Mallもコロナウィルスによるパンデミックでほどなくして、閉店を余儀なくされ、現在もまだ一時閉鎖の状態です。
先のドライブスルーサファリの帰路でAmerican Dream Mallを通りましたが、人影はまったくなく、静まり返っていました。
このパンデミックでテナント契約を解約するショッピングエリアのテナントが少なからずいて、建設にかかった費用の支払いなども滞り始めているようです。



そんな最中、マイクロソフトが直営店を廃止するという発表を行いましたね。Forbesはマイクロソフトが直営店を廃止することを決定した記事内で、
"同社は今後、米ワシントン州レドモンドの本社近くとニューヨーク、ロンドン、シドニーに店舗ではなく「エクスペリエンス・センター」を開設する計画だ。それが具体的にどのようなものになるのか、まだ明確には示されていない。だが、名称から想像できるのは、消費者にブランドや製品を紹介したり、展示したりするものではないということだ。


多くのブランドが今、まさにこうした変更について検討している。あちこちに数多くの店舗を持つのではなく、限られた場所に販売以外の目的を持った店を置こうとしている。"
と紹介しており(https://forbesjapan.com/articles/detail/35514)、コロナウィルスによるパンデミックはまさに今、物理的店舗、ショッピングという体験、顧客との関係性、の再定義を差し迫ったかたちで求めているといえるでしょう。


そこで、今月はすでにオンラインプラットフォームやテクノロジーを活用し、顧客に新たなオンライン体験を提供している先行事例として、以前第14回のコラムでご紹介したニューヨークを中心に子どもの玩具店を展開するCAMPと、子ども向けのオンラインラーニングサービスの2事例をご紹介しながら、物理的な店舗での顧客体験を提供することが難しくなりつつあるアフターコロナ環境下でのオンラインでの顧客体験の可能性について考えてみたいと思います。

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ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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