NYノマド 第19回 コロナ禍で激しさを増すビジネスサバイバル -ニューノーマルを商機に変えるサービスデザインとは?Part2

20.08.12 10:19 AM By s.budo

Part2. 子ども向け玩具店CAMPとコロナ禍 
―オンラインをフル活用した体験の提供

以前第14回のコラムでご紹介したニューヨークを中心に子どもの玩具店を展開するCAMPは7月から店舗営業も再開しています。

しかしながら、コロナウィルスのパンデミックで物理的店舗を通じて顧客におもちゃだけでなく遊ぶ体験を提供するということが困難な状況下で、次々と次の一手を展開しています。

ウォルマートと提携し、ウォルマートのアプリでCAMPが提供する子ども向けのクラフトやアート、歌、運動などのレッスンをバーチャルコンテンツで提供することを初めています。

画像:https://www.campbywalmart.com/よりスクリーンショットを引用

このことを知ったのは娘が迎える誕生日向けにバーチャルバースデーパーティを無料で提供することを知らせるメールをCAMPから受け取ったからです。普段よほど興味がない限り、広告と思われるメールは開封しないのですが、この送られてきたメールはキャンプの会社の個人名からのアドレスと、娘の名前を含むバースデーパーティのタイトルが記載されており、思わず、開封してしまったのです。

画像: https://camp.com/birthdaysよりスクリーンショット画像を引用
メールの内容は、CAMPから娘へのオンラインバースデーパーティの招待状でした。
パンデミックでお友達をたくさん読んだお誕生日会ができないという子どもたち向けにオンラインお誕生日会を提供するのでぜひ利用してみてくださいという内容だったのです。

複数のバースデーガール&ボーイに30分程度無料でお誕生日会をしますよということで、物は試しと、登録してやってみることに。

登録画面に進むと、パーティは無料ですが、有料でカスタマイズしたパーティも提供していますとの表記が。覗いてみると、様々なパフォーマーを選び、オンラインでパーティをデザインして開催することができるオンラインパーティサービスの提供も始めているようです。
どのエンターテナーを選ぶかによりお値段が変わりますが、マジシャンから音楽家まで、様々なラインナップでおよそ150ドルから500ドルほど。コロナウィルスによるパンデミックで営業ができなかった期間にこれだけの新たなサービスを展開しているとは、なんとも対応が早いですね。


無料のオンラインバースデーパーティの登録では、子どもの名前などの情報と共に、子どもの写真を添付すること、そして今子どもが好きな歌、子どもの関心があることなど子どもを紹介するような内容について記入する欄などがありました。
画像: https://camp.com/celebrateよりスクリーンショット画像を引用

申し込んだオンラインバースデーパーティの3日前に、誕生日の子ども用のZoomリンクと、ゲスト用のZoomリンクがメールで送られてきて、子どもにバースデーソングを歌うときに何かキャンドルや小さなプレゼントなどを用意してもらえると盛り上がりますよというような説明がありました。仲の良いお友達にもリンクを送り、いよいよ、当日を迎えます。

画像:CAMPオンラインバースデーパーティに登場したパペットとホスト、筆者撮影

無料のオンラインバースデーパーティですが、5人ほどの誕生日を迎える主役の子どもたちのほかに、CAMP担当スタッフ、パーティ司会とパペット、そしてマジシャンが登場。

パペットはなんとセサミストリートの制作チームと連携して提供しているもののようで、なかなかの本格派。

主役の子どもたちをスライドで子どもの写真とともに、事前にメールでお知らせした内容が持ち込まれたバースデーキッズの紹介がされました。


子どもたち一人ひとりに名前を呼びかけ、「素敵なダンスを踊って見せて」「変な顔できるかな?」といったように声をかけながら、巻き込み、アメリカではここ最近オンラインミーティングやオンラインラーニングで定番になりつつある、アイスブレイクの一つ、"スカベンジャーハント"を実施。

これは、宝探しゲームのようなもので、あるお題が出され、それを家の中で見つけてくるというものです。


娘の学校の遠隔授業でもよくやられていたのですが、例えば、リサイクルを学ぶ授業で、「今家の中にあるリサイクルマークがついているものを見つけてきて」というお題が出され、それを家の中で探して、オンラインミーティングの画面上に見せるというものだったり、食べ物の授業で、「栄養がある食べ物を見つけてきて」というようなミッションであったりでしたが、子どもたちは大好きで、真剣な顔で家中を探し回り、誇らしげに見つけたものをスクリーン画面で見せるという、自宅にいながら、オンラインで繋がり、共に学んだり、楽しむのにうってつけのアクティビティです。


今回はクイズ形式で、「毎日2回、使うもの。これをすることで、とってもきれいになって、虫歯がなくなるよ。これなあに?」といったお題が出され、それを家の中から取ってきてスクリーン画面で見せるというようなことを何問かやりました。


子どもたちはみんなノリノリです。

画像:CAMPオンラインバースデーパーティに登場したマジシャン

そして満を持して、メインのエンターテナーが登場。


なんと、マジシャンでした。


子どもたちはこのマジシャンのユーモラスなトークとマジックに大いに魅せられ、始終、大笑い。参加してくれた娘のお友達も、これは楽しかったと大満足でした。


最後にハッピーバースデーの歌を皆で歌い、ダンスをしてフィナーレ。30分程度と事前に告知があったオンラインパーティですが、終わってみると50分間のボリュームでした。

これで無料というのはなかなか素晴らしいサービスだと、娘の友人の親たちにも大好評でした。


CAMPにとっては、なかなか物理的な店舗に来てもらうことが難しい中で、顧客との関係性を作り、継続するとともに、バースデーキッズの友達や親も参加するオンラインパーティで、新たなポテンシャル顧客に広告したり、見出す機会ともいえますし、新規に始めたオンラインパーティサービスのお試し、広告の機会にもなっているのでしょう。CAMPのコンセプトである、"Family Experience Store(家族体験型店舗)"をオンラインで実現し、さらにオンラインのメリットを生かした形のサービスを提供している同店の、オンラインでも進化し続ける攻めの姿勢に未来を感じました。

物理的な学びの場を支えるオンラインラーニング

さて、オンラインなしには成立しなくなりつつある領域の一つが「学校、学び」です。
ニューヨーク市のデブラシオ市長は、9月から始まる2020年度の新学期は学校に1~3日登校する対面式とオンライン授業を組み合わせ、一度に投稿する児童や生徒数を制限することでSocial Distancingを確保したかたちで学校再開を目指すことを7月初めに発表しました。
市の学校は通常1クラス約30人、一度の登校数は通常時の半分以下になる見通しで、登校せず、すべてオンライン授業を希望することも可能です。

ニューヨーク市はオンラインでの学習環境構築への支援が必要な家庭に対し、300,000台のiPad配布することなども決め、さらに、対面式の学校生活においてコロナウィルスの陽性が出た場合、1人出た場合には発生したクラスの教員および生徒が14日間の自主隔離を行う、異なるクラスで2件以上発生した場合は学校全体を閉鎖し、オンラインクラスに移行するなど、厳格なルールが設定されました。


私が住むニュージャージー州では、日々再増加するコロナウィルス感染者数の状況をにらみつつ、公立学校の再開に関して、オンラインで受講する選択肢を許可する決定をしましたが、通学をどうするかについては、まだ最終的な決定がなされていません。
しかしながら、少なくとも、オンライン授業がなんらかの形で組み込まれる可能性が高そうです。

3月半ばから6月まで、私の娘のプリスクール(日本でいる幼稚園の年少、年中に該当)も完全にオンラインラーニングのみになりました。

続いては、その時に利用した子ども向けオンラインラーニングサービスをご紹介し、オンラインの可能性や価値について考えてみたいと思います。

はじめに -アメリカの学校事情

アメリカでは日本と異なり、子どもの教育においてはざっくりになりますが、大きく分けると

  1. 公立学校
  2. 私立学校
  3. ホームスクーリング(家庭内教育)

という選択肢があります。他にも、マイクロスクーリングという少人数の学びなどもありますが、もちろん、別の定義や弁別の方法もたくさん存在するとは思いますが、日本と比較して分かりやすいように、上記に分けてみました。

①公立学校

①公立学校」はその名の通り、パブリックスクールとなります。


地方自治体が提供する公立学校は、その地域に在住し、原則として無料で授業を受けることができます。地域によって学力やレベルにかなりの差があり、地域ごとの教育レベルを知るためのウェブサイトが存在します。


例えば、Great SchoolSchool Diggerなどで、それらの情報をもとに保護者達は学校区の選定などをすることが多いようです。
私が日本から渡米し住まいを決める際に、子どもがいる場合は不動産屋にこれらのサイトをチェックし、住まいを決めることを勧められました。
公立学校の教育レベルの高い地域は税金や不動産価格も高く、ある一定以上の所得者層が住んでいる地域と言えるでしょう。また、日本とは異なり、公立学校でも"マグネットスクール"や"Gifted/Talented program"と呼ばれる、日本でいう一芸や才能を持った子どもが選抜方式で通うことのできる学校やプログラムが存在します。

②私立学校

②私立学校」は伝統校から、カソリックなどの教会が母体となる宗教教育に根差したもの、さらにオルタナティブ教育やプログレッシブ教育と呼ばれる独創的かつ独自の教育を展開する学校など、本当に様々な選択肢があります。

ニューヨーク市内では青いペイントを施してパフォーマンスを展開するブルーマングループが展開するブルースクールや元グーグルのエンジニアが始めたAlt Schoolが前身のAltitude Learningなどなど、革新的で独自の教育を提供している学校が少なからずあります。

③ホームスクーリング

③ホームスクーリング」は2018年のデータで、およそ200万人弱の生徒がいると推定されており、学校に通学せず、家庭に拠点を置いて学習を行います。

ホームスクーリングはアメリカでは合法ですが、州ごとに定められた基準や要件を満たす必要があります。
コロナウィルスによるパンデミックで、さらに存在感を増しつつあり、私が入っているFacebookの地域の子どもを持つ親のコミュニティでも、ホームスクーリングの選択肢が話題に上がることを目にするようになってきました。
今現在、アメリカでは9月の新学期開始に向けて、学校や州政府などが学校再開のルールや感染防止のプロトコル施行に取り組んでいます。この中で、国内で親たちがZoomの授業はもういらないといった抗議デモを行ったり、逆に子どもを学校に行かせずに、ホームスクーリングを選択するなど、家庭内でも対応や意思決定も様々です。

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columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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