NYノマド 第33回 高速スケール&ピボット(拡大&転換)し続けるアメリカのスタートアップ Part3

21.10.18 03:36 PM By s.budo

次々にピボットされるサービスデザイン 
外野菜宅配のサブスクリプションサービス Misfits Market

もう一つ、2020年コロナ禍で利用を始め、現在までにサービスデザインの変化を大幅に感じているものがあります。


それは、以前のコラムでもご紹介した規格外野菜宅配のサブスクリプションサービスのミスフィッツ・マーケットです。

画像:https://www.misfitsmarket.com/よりスクリーンショット画像を引用

2020年3月にロックダウンにより日常の買い物が思うようにできなくなり、生鮮食品の自宅デリバリーサービスを探していた中で、以前から気になっていた、廃棄予定だったオーガニックもしくは遺伝子組み換えでない規格外野菜を市場価格の約25%から40%安い価格で自宅に宅配してくれるサービスのミスフィッツを知り、2020年4月に利用を始めました。

1年半前の利用当時は、定期宅配の2つのコースがあり、それぞれのコースに応じてベースボックスが設定され、それに相当する野菜とフルーツが送られてきます。

  • Madnessコースは1回35ドルで8~10kg相当のベースボックス
  • Misfitsコースは22ドル約4~5kg程度のベースボックス

その量に相当する季節の野菜とフルーツが届けてくれるものです。

宅配される野菜やフルーツの種類や個数を具体的に選ぶことはできず、ミスフィッツ側で在庫のあるものが送られてきます。そのため具体的に何が届くのかわからず、常備しておきたい野菜は別途購入する必要があり、フルーツ、ハーブ、調味料、パン、菓子、飲料など、限定的なラインナップの中ではありますが追加で商品を購入することができました。

しかしながら、肉や魚、牛乳などの購入も別に行わなければならず、結局他のサービスを併用したり、スーパーに出かけて購入したりしなければならず、ワンストップで買い物が済ませられない点が私にとってペインポイントになっていました。


これらのペインポイントは、規格外野菜を安価に購入できる、規格外野菜を購入することでフードロスの社会問題の解決に貢献できるというミスフィッツのコアな提供価値とのトレードオフの状態になっていたのです。

そんな中、すぐに変化がありました。

このトレードオフ状態と顧客のペインポイントに呼応し、2020年7月には定期便のベースボックスの内容をカスタマイズできるサービスが開始されました。

3つから4つのグループに7~8種類の野菜や果物が分かれて表示され、各グループから指定された種類数を選ぶというものです。

全ての野菜やフルーツを選ぶことはできませんが、それでも、比較的必要なものを複数選んで買えることはこのペインポイントを大きく解消してくれます。

画像:2020年9月頃のグループ別購入画面、https://www.misfitsmarket.com/よりスクリーンショット画像を引用

画像:2021年9月時点でのスマホ画面よりスクリーンショット画像を引用

しかしながら、この変更はまた別のペインポイントを生み出しました。


在庫が十分にある宅配予定日の3日前の午後からこの選択画面がオープンとなりますが、早い者勝ちのため、人気の高い、常備野菜はすぐに売り切れてしまいます。

日常の食料品の買い物をするためだけにパソコンやスマートフォン画面の前にスタンバイし、人気のあるアーティストのライブチケットを注文するように気合を入れて、画面のオープンと同時に素早く必要な食材をクリックしなければなりませんでした。

予定などがあり、注文画面オープン時を見逃してしまうと、主だった野菜やフルーツはすでに売り切れとなり、その週の買い物が完了となりませんでした。注文画面オープンのリマインドメールが事前に送られてくるものの、物忘れが激しい私はリマインドメールの開封時にはすでに画面オープンからしばらく経っており、購入したい野菜やフルーツが売り切れ、その週の購買を見送るということも何度か続きました。


ペインポイント改善のために導入されたグループ別商品選択システムが新たなペインポイントを生み、それが私にとっては本サービス利用の大きな阻害要因となり、その結果、2021年4月を最後にしばらく購入を控えることとなってしまいました。

そして、今夏8月、夏野菜の季節を試してみようという気持ちになり、久々に購入のために注文サイトにアクセスしてみることにしました。

すると、なんとグループ別注文のシステムが完全に撤廃され、他のスーパーなどのオンラインショッピングと同じように、全ての野菜、フルーツが自由に選択できるようなサービスに変化を遂げていたのです!

ボックス毎の課金システムもなくなり、好きなものを好きなだけ自分のカートに入れ、カート内が最低注文金額30ドル以上になり、注文受付締め切り日の翌日に自動的に決済が行われます。

ですが、今まで通りの定期宅配サービスは変わりませんので、配達日は毎週曜日が固定され、思いついたときや必要な時に注文することはできません。配達日の5日前ほどに、ショッピングウィンドウがオープンし、オープンしている3日間の間、注文と注文内容の変更ができます。3日後に注文が確定し、指定の配達日に配送されるという流れです。

この大きなシステム変更はオンライン上の顧客のユーザーエクスペリエンスだけでなく、注文、パッキング、配送、在庫管理といった全てのプロセスの大幅な変更を課すものだったと想像します。

野菜やフルーツ以外の商品群も拡大しており、当初はなかった、牛乳や魚、肉類、パンなどが逐次追加されており、インポッシブルミート(Impossible Foods Inc., )など植物性代替肉といったビーガン商品も充実しています。

アボ同様、前回のコラムで指摘している配達クオリティの低さは未だ健在で、せっかくの新鮮な野菜やフルーツが無残な姿で届くがっかり感は解決されていません。配達された段ボールや割れたスイカの様子からは、ミスフィッツを含めた、スタートアップの完璧でないが、とにかくベータ版に近い状態やクオリティでもビジネスをスタートして改善していくという臨場感を感じていただければ幸いです(笑)。

画像:2021年8月注文分の配送、段ボールと配達過程でダメージした野菜(筆者撮影)

そしてミスフィッツには何よりも、この低い配達クオリティのペインポイント改善を優先してやって欲しいものです。

しかしながら、一連の改善プロセスのサイクルを回し続けている様子を、2020年利用開始時から今までの限定された期間ではありますが、サイトにログインする度に感じます。

当初のボックスベースの宅配サービスからサービス内容やシステムを大胆にピボットし続けている姿勢やスピード感は学ぶものが多いですね。
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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。