NYノマド 第11回:ホリデー商戦と手放せないメディア Part2

19.12.11 10:09 AM By s.budo

Part1では、サンクスギビングデー向けた、あっぱれな出来栄えのAmazonカタログを取り上げましたが、Part2ではブラックフライデー用、親のショッピングのための子どもを預かるサービス、映画館の最新事情、そして競争が激化する動画配信サービスをご紹介させて頂きます。

ブラックフライデー用、親のショッピングのための子どもの預かりキャンプ

いよいよブラックフライデーという週に、Facebookのこちらの子どもを持つ親のローカルコミュニティのページをつらつらと見ていたところ、こんな投稿が流れてきました!
"Black Friday Drop N Shop Camp!"


Bring your kids to My Gym for a fantastic fun filled day while you go shopping to take advantage of Black Friday Sales!

子どもをこのMy gymという子ども向けのスポーツ施設に預けて、ブラックフライデーのショッピングに行ってきてくださいね!

という親向けの預かりサービスのイベント情報です。


このイベントは2歳半から13歳までの子どもを対象、価格は午前、午後に分かれたセッションがそれぞれ施設の会員40ドル、非会員50ドルというものです。

朝から夕方まで、もちろん有料ですが、おやつやランチも提供され、子どもはこのスポーツ施設でアクティビティをして遊んで過ごし、その間に親は思う存分子どもなしのショッピング時間を楽しむというものです。


なかなかショッピングが大好きなアメリカらしいサービスですね。


加えて、アメリカでは"Parents Night Out"と呼ばれる、子どもを持つ夫婦が2人だけの時間を楽しんだり、親が自分の時間を楽しむための同様の子ども預かりイベントが、上記のようなスポーツ、アート、ダンスなど様々な子ども向けサービス組織が主催し、頻繁に開催されています。こういった文化があるアメリカだからこそ、親が自分たちだけの時間を楽しむという価値を提供するサービスやビジネスが成立するんですね。


日本だと、まだまだ親が自分だけの時間を楽しむために子どもを外に預けることには罪悪感があったり、世間の風当たりを気にしたりして、実際にこのサービスを利用するにはハードルが高いように思います。

しかしながらアメリカでは、親も一人の人間、全ての人は自分の好きなことをしたりして個人を充実させることが大切と考えられており、こうした子どもを持つ親向けの自由時間提供ビジネスが存在するのです。

ベビーシッターやナニーも、定期的に雇う以外にスポットでナイトアウトのために雇ったりすることも当たり前のようにされています。


文化や価値観が成立させるサービスの典型例といえるかもしれません。

個人的には、子どもを持つ親が、親という役割をおろして、自分自身を充実させることで、よりよく親という役割を担うことができることに繋がると思いますので、こういったサービスが日本でも世間の厳しい声なく、自由に使えるようになるといいなと願いつつ、いつか利用してみたいと思っているところです。

ホリデーシーズンに欠かせないエンターテイメント

ショッピングやクリスマスプレゼントに加えて、ホリデーシーズンに欠かせないのが映画などのエンターテイメントです。

寒さが厳しいこちらの冬は、屋内で温かく楽しめるエンターテイメントがなくてはならない存在です。


この時期はたくさんの新作が封切されます。

我が家も先日日本でも同時公開された『FrozenⅡ(邦題:アナと雪の女王2)』を観に行きました。

本編上映の前に流れる新作映画の紹介、プレビュー(こちらではトレイラーといいます)が長かったですね。30分くらいあったのではないでしょうか。

さて、映画の中身はさておき、今回映画のチケットをAMCという映画チェーンのシアターで観るためにウェブで購入したのですが、このシアターでは飛行機の航空券のように、購入しようとする時間帯やアクセスした時間によって、チケットの価格が変動するものでした。

恐らく、空き状況、需要と供給によって価格が変動しているのだと思うのですが、私たちが行こうとしたシアターでは以下のような値段となっていました


(筆者が2019年11月21日にAMCのウェブサイトにアクセスし、特定の映画館の異なる日時のFrozenⅡのチケットの価格情報を抜粋)

 NOV 22, 2019 8:30 pm

Adult $11.99 USD

Child Age 2-12 $8.99 USD

Senior Age 60+ $10.49 USD

 NOV 23, 2019 3:30 pm

Adult $9.49 USD

Child Age 2-12 $7.99 USD

Senior Age 60+ $7.99 USD

 NOV 23, 2019 6:30 pm

Adult $11.99 USD

Child Age 2-12 $8.99 USD

Senior Age 60+ $10.49 USD

 SUNDAY, NOV 24, 2019 11:00 am

Adult $8.99 USD

Child Age 2-12 $8.99 USD

Senior Age 60+ $8.99 USD

日本ではこんなに細かく価格変動する映画館はあまりないのではないでしょうか。
値段の幅が3ドルほどあり、大人、子ども、シニアの価格が同じときもあれば、異なるときもあり、どういうロジックでこの価格変動制が組まれているのか興味が湧きます。

昨今、テクノロジーがコンテンツプラットフォームビジネスを加速させ、Netflix、Amazon Prime、Apple TV+などの動画配信サービスの人気が高まっている中、映画館ビジネスも生き残りに必死です。

映画館でしかできない体験、を提供しようと、プレミアムな映画館体験だけを提供するIPICのような映画館チェーンがあったりします。
こちらの映画館では、全てのシートがプレミアムシート、もしくはプレミアムプラスシートとなっており、ゆったりとした空間で、大きなスクリーンを観ることができます。

プレミアムシートは下の画像の黄緑色のシートが該当しますが、カップルで目の前のスクリーンを寝転んで観るシートになっています。

上段のオレンジ色のシートはプレミアムプラスシートとなっており、リクライナー付きのレザーの椅子、枕、毛布などをボタン一つで持ってきてもらえたり、自席でポップコーン食べ放題だったりと、ラグジュアリーな体験を売りにしたものです。

価格は、プレミアムシートが1人16ドルプレミアムプラスシートが席代とサービス料金含めて27ドル

私がFrozenⅡを観た映画館のチケット価格と比較すると、かなりの高価格です。
こちらの映画館ではポップコーンが6ドルなので、この値段だったらプレミアムプラスシートに座ろうと顧客が思って選択してくれるだろうという目論見なのかなと最初は思っていたのですが、映画に16ドル出すような顧客は、27ドルという金額も許容範囲なのではないでしょうか。
ポップコーン単品も6ドルで販売されていますし、プレミアムな経験にお金を払うような人は、16ドルにケチってラグジュアリーな体験をしようとは思わないのかもしれません。
実はIPICシアターを試したことがあるのですが、私は小市民ですので、IPICのラグジュアリー体験を試すためにケチって16ドルのプレミアムシートを座って映画を観てみましたが、前方にあるプレミアムシートはスクリーンが近すぎてまったく快適に観れず、ポップコーン食べ放題もついていなかったため、ラグジュアリームービーの経験にあまりならなかったというオチがあります。。

日本でもプレミアムシートやカップルシートなどを設ける映画館が増えてきていますが、プレミアムシートや追加のサービスだけでは映画館に人を呼び込むだけの体験としては物足りないように感じます。


つい先日、NBCでは新作封切の映画の話題と共に、近年映画の平均上映時間が増加傾向にあると報道していました。
2009年に平均116分だった上映時間は、2018年に125分に増加しているといいます。
その理由は有料の動画配信サービスだけでなく、YouTubeなどで短い動画を楽しむ文化に対抗し、映画にしかない経験を提供しようという制作者の思惑が反映されているのではないかと解説していました。

いずれにせよ、動画配信サービスが興隆し、多くの会員を獲得している中、もう一手、二手、何かパンチのあるサービス、映画館での鑑賞体験を刷新するようなサービスが必要ですね。

米動画配信サービス、冬の陣!

動画配信サービスでは、つい先日もDisney+というディズニーレーベルの動画配信サービスがリリースされましたが、初日でなんと1000万人の加入者を獲得し、あまりの人数にサービスにアクセスできなかった加入者が続出したということがニュースになっていました。

動画配信サービスの自宅や出先などでいつでも、どこでも観れる手軽さ、豊富なコンテンツを安価に見れる価格などは、レストランデリバリーサービスの回にも書いたように、自宅から出たくないめんどくさがりのアメリカ人の心をわしづかみにしているのでしょう。

動画配信サービス、冬の陣が火ぶたを切っています。

しかしながら、あまりにもたくさんの動画配信サービスが乱立し、さながら戦国時代状態で、顧客はどのサービスを利用するのが良いのか、悩ましいという状況になりつつあります。

先のDisney+のニュース記事で紹介されていた主なキープレイヤーはNetflix,、Amazon Prime Video、Disney+、Apple TV+、HBO Max

Disney+は家族層には必須の動画配信サービスで、2024年までに6000万から8000万人の加入者を見込んでいるといいます。
ものすごい数ですね。
Disneyは米通信大手のVerizonとパートナーシップを組んでおり、Verizonの容量制限なしの通信サービス、VerizonのTVセットトップボックスサービスのFios、5Gブロードバンドネットワーク加入者には無料でDisney+のサービスが利用できるようになっているようです。

Amazon Prime VideoはAmazon Prime会員が利用できますので、およそ1000万人の利用者がおり、ゴールデングローブ賞やエミー賞を受賞しているオリジナルドラマ、“The Marvelous Mrs. Maisel(邦題マーベラス・ミセス・メイゼル)”などのオリジナルコンテンツも楽しめることが評価されているようです。

Apple TV+は月額4.99ドルですが、加入した1年間は無料で利用することができ、既存のApple Music以上の需要を見込んでいるとされています。

Netflixは最低月額料金が8.99ドル、加入1か月間は無料で全世界に約1億6000人の加入者がいます。
他の動画配信サービスと比較して料金が高めで、Disney+ やHBO MaxがNetflixに代替しうるサービスですが、独自に投資、制作しているオリジナルコンテンツや豊富なラインナップで一定の加入者をがっちりと掴み、底堅いビジネス展開をしているといえるでしょう。

HBO Maxはワーナー系列が総力を挙げてスタートする動画配信サービスで2020年5月よりサービス開始予定です。
月額料金14.99ドルで他の動画配信サービスと比較してかなり高額ですが、セサミストリート、スーパーマン、バットマン、ロードオブザリング、マトリックスなど高品質の作品を豊富にそろえ、対抗する姿勢で2025年までに5000万人の加入者を想定しているとのことです。

他にも、米放送局のNBCがNBC’s Peacockという、広告収入ベースの無料動画配信サービスを立ち上げる予定を発表するなど、これでもかという動画配信サービスの充実ぶりです。


私はまだAmazon Prime Videoしか利用したことがないのですが、ここ最近は生まれたばかりの子どもの授乳中は椅子から動けないため、時間を持て余していると感じることが多く、Netflixに加入してしまいたい誘惑に駆られています。しかしながら、上の4歳の娘がアニメなどのTV番組を見せると、制限なく見たがり、過去には無理矢理消すと癇癪を起すことが何度かあったため、動画配信サービスはおろかケーブルTVを観ることもあまりしないようにしているため、Netflixに加入してしまった後の世界を想像し、躊躇してしまっています。


もし、いくつかの動画配信サービスを試すことになったら、皆さんにコラムでまた報告させていただきたいと思います。




さて、今年最後となるPart3では、TVやゲーム、スマートフォンを持つ子どもの問題に関する様々な体験をご紹介させて頂きます。


Keep in Touch !

ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター



コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

s.budo