NYノマド 第21回 Staycation(ステイケイション)が示唆する顧客提供価値 Prat2

20.10.13 01:47 PM By s.budo

Part2. 様相変わるバケイション&トリップの過ごし方

9月末現在、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネティカット州では、米国内の32の対象州から NY 州・NJ 州・CT 州に移動する全ての人に対し、対象州を離れた日から14日間自主隔離を実施することが義務付けられています。対象州となる基準は直近7日間の平均で、陽性者数が10万人当たり10人以上又は陽性率が10%以上の州です。違反者は罰金が科されることがあり、特に NY 州は,対象州から NY 州へ移動する人に連絡先等の情報を提供することを求めており、提供しない場合には2000ドルの罰金が科される可能性があります。

この行政令のため、米国内のほとんどの州に移動をすることが難しくなっており、ニューヨークや近隣州の人々で特に仕事をしている人やその家族は、今年の夏は近場で過ごすことを余儀なくされていました。

 

今回のコラムではコロナウィルスで様変わりしたバケイションスタイルをテーマに、こちらでのバケイションレンタルサービスの概況や経験について皆さんにご紹介したいと思います。

 

Staycation(ステイケイション)が推奨された日本と同様、こちらアメリカでの夏の過ごし方も、海外や全米のリゾート地に飛行機で訪れ、長いバカンスを過ごすというバケイションスタイルから、自宅から自家用車を運転してロードトリップで近隣の別荘地や保養地などで自身の別荘やAirbnbなどのバケイションレンタルを利用したり、ニューヨーク市内のホテルのプールや自宅アパートに設置された住人専用のプールやバーベキューエリアなどでゆっくり過ごすというStaycationが多くなっていたようです(https://abc7ny.com/high-line-highline-staycation-nyc-summer-vacation/6374490/)。

 

周りの知人、友人と会った際に、夏の過ごし方、夏休みについて聞くと、ハンプトンやアップステイトと呼ばれる、ニューヨーク州の北の自然豊かな保養地エリアで過ごしたという答えや、自宅のアパートメントやマンションにあるプールなどで過ごしたという答えが返ってきました。ちなみにアップステイトとは、ニューヨーク都市圏(メトロノース鉄道の範囲)より以北を指します。実はニューヨーク州は、土地面積は54,556 平方マイル (141,300 km2) 、北海道と九州を併せた程度あり、東西最大500km、南北最大450kmに広がり、最南端の都市ニューヨーク市から第2の都市バッファローまで自動車で行くと約67時間を要します

カナダとの国境も有したニューヨーク州は、マンハッタンを抱えるニューヨーク市の都市イメージとは異なり、ワイナリーやファームなどを多く有する自然豊かな州でもあるのです。


3月のパンデミックから旅行に行くことが遠のいていた我が家も、今夏は車で近隣州にバケイションレンタルをして引きこもりだった日常に少しでも非日常の時間を過ごそうと、バケイションレンタルを利用してみることにしました。

バケイションンレンタルがメジャーな国、アメリカ

画像:Airbnb社のウェブサイトよりスクリーンショット画像を引用

バケイションレンタルサービスといえば、日本でも、そして世界的にも代表的なサービスといえば、"Airbnb"が挙げられるでしょう。


ご存知の通り、空き家や空き部屋持つオーナーとそれを借りたい人とをつなぐ、民泊のプラットフォームサービスを提供する会社として2008年、米サンフランシスコで設立されました。現在は民泊だけに留まらず、ローカルな体験を案内するツアー体験や、オンライン上でスポーツ選手やアーティスト、シェフなどの専門家やプロ、そしてアマチュアの様々な人がユニークな体験や知識などを教えたり、提供したりするサービスを提供しています。


私も、渡米後、ニューヨークのローカルでユニークな体験をしてみたいと考え、ニューヨークのMoMAで現代アートを現役のアーティストが案内してくれるツアーに参加したり、ニューヨーク市内Brooklyn区にあるユダヤ人居住地区で、ハシド派ユダヤ人の方がユダヤ教や文化について街歩きをしながら案内してくれるツアーに参加したことがあります。

コロナウィルスによるパンデミックで、一時期はメインのバケイションレンタルサービスやローカルなツアー体験サービス事業がかなり苦しくなり、人員解雇なども行っていましたが、物理的に海外旅行が難しくなった状況下で、自宅にいながらオンラインで世界各国の文化や人などの多種多彩なユニーク体験を学べるサービスを打ち出すなど、ビジネス環境の変化にも対応していこうとする姿勢が伺えます。

Airbnbサービスのポジショニング ーユニークで小規模な民泊

さて本業の民泊業、バケイションレンタル業についてですが、Airbtics.comによれば、日本には宿泊可能な物件の登録数であるリスティング数はおよそ50,000


登録されたリスティング数の多い上位5か国は、

                                                                                                                                                                                                                                                                                                

* アメリカ — 660,000 listings(件)

* フランス — 485,000 listings(件)

* イタリア — 340,000 listings(件)

* スペイン — 245,000 listings(件)

* イギリス — 175,000 listings(件)


となっています


アメリカがリスティング数で堂々の1位、それと比較すると日本は1/10以下のリスティング数ですね。
国土の広さや居住者数も強く影響していると思いますが、それでもアメリカの660,000件はかなりの数字です。

そもそも、セカンドハウスの戸建て住宅数は日米で大きな差があり、 総務省「平成 30 年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」によれば、 日本では「賃貸用の住宅」が 432 万7千戸(総住宅数に占める割合 6.9%)に対して、別荘などの「二次的住宅」が 38 万1千戸(同 0.6%)に留まっています。翻って アメリカでは、全米住宅建設業者協会(NAHB:National Association of Home Builders)の推計によれば、2016年のセカンドハウス数は740万戸、総住宅数に占める割合はおよそ5.6%とされており(ACS)、 日本の約20倍のセカンドハウスがアメリカに存在することが分かります。
Airbnbのリスティング数の差もこのセカンドハウス戸数のベースの差が反映されていると考えて妥当でしょう。


別荘などのセカンドハウスがそもそも豊富なアメリカでは、ホテルやB&B(ベッド・アンド・ブレックファースト)といった宿泊施設以外に、セカンドハウスの別荘で週末やサンクスギビングやクリスマスなどの休暇を過ごす文化ができていると言えそうです。

もう少しざっくりと、Airbnbの民泊のイメージを捉えていただくために、日米の宿泊施設を主観でマッピングしてみました。

図:Airbnb(バケイションレンタルサービス)のポジショニングマップ、筆者作成

高級リゾートホテルはそれぞれのホテルでその土地に合わせたユニークなサービスやラグジュアリーなサービスを提供しており、規模は比較的中規模から大規模が多いと思います。


日本のビジネスホテルやエコノミーホテルは比較的大規模で宿泊や食事をするレストラン、フィットネスやプール、お風呂といった標準的な施設や機能、サービスを提供しており、右下の象限に位置します。


Airbnbや同種のバケイションレンタルサービスを提供するVrboは個人オーナーが所有するセカンドハウスや自宅の部屋を貸し出していますので、比較的小規模で、ユニークな宿泊施設を多く保有していますので、左上のオンリーワンで小規模な象限に位置する宿泊だと言えるでしょう。

コロナウィルスによるパンデミックでは、人込みや大勢の人が集まる場所を避け、家族だけで、もしくは親しい友人同士だけでこぢんまりと過ごせる場所へのニーズが高まり、その結果、こちらアメリカでも多くの人がホテル等の利用から、バケイションレンタルサービスを利用して別荘などで過ごす夏休みになっていたのではないかと推測します。

バケイションレンタルを探すためにAirbnbとVrboの両方を利用した結果…

画像:https://www.vrbo.com/travel/staycationよりスクリーンショット画像を引用

Airbnbの類似サービスであり、競合であるVrbo社は、実はAirbnbより古参で1995年創業です。


スキーリゾート地のリゾートマンション(アメリカではコンドミニアムと言います)を利用していない期間に他の人に貸し出すサービスから始まり、別荘などのオーナーと宿泊したい人や家族をマッチングするサービスからスタートし、世界各国で200万件以上のバケイションレンタルサービスを提供、現在はエクスペディア(Expedia)グループの傘下に入っています(https://en.wikipedia.org/wiki/Vrbo)。

今夏、バケイションレンタルを探すためにAirbnbとVrboの両方を利用したのですが、多くの登録物件が、両社に登録されており、値段や利用プロセスはさほど大きく変わらないようです。


Airbnbも、Vrboも、自宅近隣でステイケイション(Staycation)が可能な物件を探すセクションを設けており、ステイケイションニーズに対応しています。


あえて言えば、Airbnbはテントタイプの宿泊施設であるゲルや木の上にあるツリーハウスといった非常にユニークな宿泊施設での宿泊体験を訴求しており、すでにユニークな宿泊施設としてキュレーションされた物件と希望する旅行先の場所と組み合わせて検索しやすいようになっています。

ちなみに日本のAirbnb物件を探してみると、古民家や温泉付きの素敵な海辺の別荘などのユニーク物件があり、日本のユニーク物件も魅力的です。

 

Vrboは旅行先から検索し、必要に応じて、旅行予定期間、費用、宿泊施設タイプ、設備などの条件でフィルターして検索するかたちです。

Airbnbでも同様のフィルター検索は可能です。

また、旅行先については具体的な地名を入力させるインターフェースが多く、ステイケイションの場合、「だいたい、自分の家から車で2時間以内の距離のところに行きたいな。」といったふうに、特定の地名が決まっていないことが多いのではないでしょうか。

自宅から車で2時間の距離だと、我が家を起点にすると、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ペンシルベニア州、コネティカット州、マサチューセッツ州と、複数の州に行くことが可能ですので、地域名を入力して検索するのは面倒です。


Airbnbの場合、"近場"という選択肢を設定すると、自宅の近隣の物件を探すことができ、この近場で検索できる点が気に入っています。


個人的には、Social Distancingが十分に確保できることは必須条件として、プラスアルファで、せっかくアメリカにいるので、日本から旅行するのとはまた違った、ユニークでローカルな宿泊施設に泊まってみたいというニーズがあったため、今年の夏休みもAirbnbを利用してバケイションレンタルを探しました。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。