NYノマド 第26回 国民的一大イベント スーパーボウルにみる広告トレンド Part1

21.03.03 10:25 AM By s.budo

皆さん、こんにちは。

春の到来が待ち遠しい季節となりました。

第26回NYノマドでは、スーパーボウル当日の広告について、どのような企業により、どのような広告が展開されていたのか、そして消費者や産業界がどのように捉えていたのか、その背景に浮かび上がるトレンドについて取り上げてみたいと思います。
  • Part1. ソーシャルディスタンシング下でのスーパーボウルと関連消費
  • Part2. 巨額のマネーがつぎ込まれるスーパーボウルサンデーの広告 ―2021年のスーパーボウル広告のお値段は?
  • Part3. 最もYouTubeで閲覧されたCMのトップ3は?
  • Part4. 最もSNSのフォロワーを増やしたブランドは? 2021年のスーパーボウルCMから見えてくること

雪に振り回された2月、総力戦のワクチン接種

最近のこちらニューヨークの近況ですが、今年の2月は昨年と比較して降雪の日が多く、スノーストームによる州政府からの緊急事態宣言が出た日もありました。

このような日はもちろん、学校は休校となり、外出についても極力避けるよう通知がきます。東部ニューヨークだけでなく、アメリカでは広範囲でスノーストームに見舞われ、温暖な気候のテキサス州といった南部などでも降雪と氷点下の気温で電気や水道などのインフラが数日間ストップするといった甚大な被害が発生しました。このスノーストームは国民の生活のみならず、コロナウィルスワクチンの接種や搬送にも大きな影響を及ぼし、ワクチンの搬送は2月の最終週になってようやく回復し始めました。

 

アメリカ国内のワクチンの接種は粛々と進められており、フェーズごとに接種対象者が定められています。

ニューヨークでは現在、ニューヨークに在住する65歳以上の住民、医療従事者、消防や救急などの緊急対応従事者、警察、公共交通機関従事者、教育従事者、老人ホームや保育所などのケア業務従事者、学校業務従事者、食料品やコンビニエンスストア、レストランなどの接客業務従事者などに該当する人が接種可能です。

ワクチンの接種は、州が運営するワクチン接種サイトのほかに、 CVS、Walgreens、Duane Reed, Rite Aidといったドラッグストアチェーンのほか、Costco pharmacies(コストコ内の薬局)で接種が可能です。

 

私が在住するニュージャージーでは今年に入ってすぐに州が運営するワクチンの予約サイトが開設されました。

年齢などの属性とともに、職業や健康状態に関するいくつかの質問に回答し、予約の登録をすると、ワクチン接種可能な要件を満たした場合に、自動で通知が来るという仕組みです。

州運営のワクチン予約サイト以外にも、スーパーマーケットチェーンで薬局部門を併設するAcme(アクミ)などの民間企業でも予約サイトが開設され、同じように登録し、通知をもらうことができます。

COVID-19のPCR検査キット自動販売機が登場

そして、ニューヨーク市内、ミッドタウンにあるペンステーション(ペンシルバニア駅)のすぐ近くにPCRテストの自動販売機が1月に登場しました。

こちらはナーサルスワブタイプの検査キットで、お値段は149ドル。自販機を利用してコンタクトフリーでキットを購入後、自宅でキットを用いて検査し、キット内に同封されている事前支払い済みのフェデックスの配送ラベルを貼り、検体をラボに送ると48時間以内に検査結果がスマートフォンのテキストメッセージもしくは電子メールで届きます。


このPCR検査キット自動販売機はWellness 4 Humanity’sが展開するもので、今後6か月以内に、全米の主要都市の空港などに設置する予定といいます。

アメリカ国内で医療保険に加入している人は、無料でコロナウィルスのPRCテストを受けることができることや、都市部にこの自販機を展開することを鑑みると、緊急にテスト結果が必要になり、すぐに近隣の医療機関等でPCRテストが受けられない状況にいる人、もしくは、旅行者や出張者で必要に迫られた人が顧客対象と考えられるでしょう。


ワクチン然り、このようなPCRテストの自販機然り、アメリカではコロナウィルスを予防する手段や医療へのアクセスをあらゆる人にとって容易にするため、様々な措置やサービス、ビジネスを通じた環境構築を総力戦で展開しています。

画像:https://nypost.com/2021/02/23/vending-machines-with-covid-19-home-tests-arrive-in-nyc/より引用

2月の国民的ビッグイベント ―スーパーボウル

レイモンド・ジェームス・スタジアムの海賊船【Ben Liebenberg via AP】 https://nfljapan.com/headlines/61828
2月はバレンタインデーとともに、国民的ビッグイベントがあります。それは、1億人が視聴すると言われるスーパーボウルです。熱狂的なファンを抱えるNFLで、毎年2月前半の日曜日に開催されるナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の優勝決定戦で、Wikipediaでは、以下のようにスーパーボウルが解説されています。

"毎年2月上旬の日曜日に開催されており、スーパーボウル当日はスーパーボウルサンデー (Super Bowl Sunday)またはスーパーサンデーと呼ばれ、事実上アメリカの祝日となっており、年間で感謝祭に次いで2番目に食糧が多く消費されることでも知られる[3]。

200以上の国と地域でテレビ中継されており、特にアメリカでは毎年テレビ番組で年間最高視聴率を記録するなど、極めて注目度の高いコンテンツになっている"

つまり、スーパーボウルはスポーツ業界だけでなく、様々な業界に大きなインパクトをもたらす大きな存在となっているわけです。
今年はパンデミックによる影響で、ソーシャルディスタンシングを考慮した当日の試合観戦やハーフタイム・ショーだけでなく、スーパーボウル放送のもう一つの目玉であるCM広告にも大きな変化があったと言われています。

Part1. ソーシャルディスタンシング下でのスーパーボウルと関連消費

先のWikipediaの説明にもあったように、食品業界、レストラン業界はこのイベントは通常は大きな売り上げが期待できる絶好の機会です。

実際、スーパーボウル開催1~2週間前頃から、スーパーボウルサンデー向けの食品や飲料をPRするスーパーやファストフードチェーンなどのCMをテレビで目にしました。

スーパーボウルは現地での観戦とともに、例年、家族や親せき、友人と自宅に集まり、飲食を楽しみながらみんなで視聴したり、レストランやバーに集って観たりと、"みんなで集まって、飲食を共にしながら観ること"、がスーパーボウルのゲームの楽しみ方の定番だからです。

しかしながら、今年は初めてパンデミックによりそれが困難な状況となりました。


Statista社のデータによれば、スーパーボウルサンデー関連消費の昨年2020年の平均消費額は88.65ドルでしたが、それが今年の平均消費額は74.55ドルとおよそ14ドル弱、平均消費額が減少する結果となっています

2011年から2021年の平均消費額を計算すると、およそ80.1ドルですので、やはりパンデミックによるソーシャルディスタンシングや経済不況の影響は大きかったといえるでしょう。

Average consumer spending on Super Bowl Sunday in the United States from 2011 to 2021(in U.S. dollars)

グラフ画像:https://www.statista.com/statistics/251064/super-bowl-sunday-average-consumer-spending/よりスクリーンショット画像を引用


オリンピックなどの国民的イベント開催時にテレビ機器が売れるというのは日本も同様ですが、デコレーションや家具といった消費も含まれ、当日のイベントをより楽しむための環境づくりにお金が投資されているようすからは、日本のお正月やクリスマスにも近しい位置づけのイベントであることがうかがえます。
画像:https://ssl.gstatic.com/trends_tpt/ac00be77bc6283db9097c589e0b2558d3d84aabb90271dcf311c1c121076be2d.pngより引用

実際に食べ物を取り上げてみると、各家庭や地域ごとのスーパーボウルサンデーの伝統食のようなものがあるようで、今年Googleが公開した"Game Day Foods(ゲーム当日の食べ物)"に関する州ごとの検索結果のマップを公開しています。


ニューヨークやニュージャージーはバッファロー・チキン・ディップ、

アーカンソー州は和牛?!


ですね。

日本でもお雑煮やおせち料理の中身は地域によって異なるように、州によってスーパーボウルサンデーに食べる食べ物の慣習が分かり、なかなか興味深いです。

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

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