NYノマド 第31回 米リテイル業界をドライブする体験型キュレーション店舗ビジネスとRaaS Part3

21.08.23 11:44 AM By s.budo

ネイキッドの対抗馬 
D2Cブランド、アートが集う世界一おもしろいお店
ショーフィールズ

ネイキッドから北に向かい徒歩で5~6分のノーホーエリアに、同じく4階建てのビルにD2Cブランドを集め、アートと共に展示販売し、ネイキッドと同じようなダイレクトコンシューマー体験型展示店舗コンセプトのリテイルソリューションを提供しているショーフィールズ(SHOWFIELDS)があります。

写真:ショーフィールズ概観、筆者撮影
2018年12月にニューヨークにオープンしたこのユニークなお店はアメリカ国内にはもう1店舗マイアミにあります。


2018年にイスラエル生まれのタル・ズヴィ・ナサネル(Tal Zvi Nathanel)さんケイティ・ハント(Katie Hunt)さんが共同創業したショーフィールズは

"The MOST INTERESTING STORE In The World(世界で最もおもしろいお店)"

というコンセプトで新たなリテイルソリューションを提供しようとしています。

1階から3階までが通常の展示販売スペースとなっており、約50種のブランドが展示されています。
4階はロフトスペースとなっており、イベント専用です。

ショーフィールズで展示販売しているD2Cブランドが顧客と直接コミュニケーションすることができる朝食会、ブランチ会、パーティといったイベントを開催したり、企業向けにイベントスペースの貸し出しを行っています。

こちらのショーフィールズ、ネイキッドとどのような違いがあるのでしょうか。
実際に訪れてみました。

作りこまれた展示ブースとユーザーエクスペリエンス 
Wow!の体験に溢れる店内とストーリーを紡ぐコネクター

入店してすぐに目に飛び込んできたのはショーフィールズの看板兼フォトスポットです。

写真:入店してすぐに設置されているサイン&フォトスポット、筆者撮影
ベンチのように座れる作りになっており、来店した顧客がここでまず一枚パチリと写真を撮影し、インスタグラムに投稿したくなるようなポップでカラフルなデザインになっています。

この看板ベンチを皮切りに、右を向いても、左を向いても目をひくような展示ブースが出現し、その存在感に圧倒されます。

未来感のある統一された展示デザインが印象的なネイキッドとは異なり、こちらのショーフィールズでは展示ブースはパネルや壁で仕切られており、ブランドブース毎に全く異なる展示デザインが展開され、全く異なる展示体験を提供しています。

ブランドと一体となった展示ブースは、足を踏み入れるごとにWow!と思わず声を出してしまうような斬新なデザインで、中には予約制で製品を体験できる有料サービスなどがありました。
写真:展示されているアートは全て購入可能、筆者撮影
ブースの間の壁には様々なアートが展示され、もちろんこれらのアートも含め、展示されているブランドや商品はほぼ全て購入可能です。



各フロアに3~4人ほどのコネクターと呼ばれる販売員が常駐しています。



このコネクターは入店するとすぐに出迎えてくれ、自分の名前を名乗り、質問があったら気軽に聞いてねと明るくフレンドリーに挨拶してくれました。

写真:1階フロアに展示されているイタリアのスニーカーブランド"P448."、筆者撮影
私が1階に展示されていたイタリアのスニーカーブランドのP448.のスニーカーを手に取って眺めていたところ、先のコネクターの男性がやってきて、P448.がイタリア生まれであること、家族経営であること、ビーガンやリサイクル素材のスニーカーを展開するサステナブルなブランドであることなどを丁寧に説明してくれました。

ネイキッドのアンバサダーたちが製品の詳細な機能情報を中心に提供してくれたことと異なり、ショーフィールズのコネクターたちはブランドのストーリーの説明にフォーカスしているように感じました。

コネクターという名づけからも、顧客とブランドとの接点づくり、ストーリーの共有にフォーカスした役割を担っていることが垣間見られます。


写真:ディスコがコンセプトのローラースケートブランド、Moonlight ROLLERの展示スペース、筆者撮影
写真:WORKをテーマに複数のブランドがキュレーション展示されているブース、筆者撮影
写真:ナイトメアーをテーマにしたデザインの展示ブース、ポップなナイトウェア、アクセサリー

会話を生み、興味関心をアンカーするデザイン 
カフェ、有料体験サービス、タブレットとオンライン販売、そして滑り台!

写真:ショーフィールズ1階のカフェエリア、筆者撮影

例えば1階フロアの奥にはカフェが併設されており、商品を見ながらコーヒーやお茶、ソフトドリンク、カップケーキなどを楽しむことができます。


限定メニューでCBD成分入りの抹茶ドリンクなどを出したり、2018年にはラグジュアリーブランドのクロエとコラボレーションした限定カフェを展開するなど、こちらのカフェでも話題を生むような期間限定メニューを展開したり、ブランドとコラボしたイベントが行われています。

写真:2階と3階に設置されている滑り台、筆者撮影
そして最初にご紹介した入口に設置された看板フォトブースに加え、フロアの3階から2階に降りる滑り台が備えられており、大人でも滑ってみたくなるようなインパクトのあるエンタメ型体験デザインが組み込まれています。

同じタイミングで訪れていた若い女性客はこちらの滑り台はもちろん、インスタ映えするブースでポーズをとっては熱心にスマホで写真を撮っていました。


写真:ブースに設置されている商品説明用のタブレット端末、筆者撮影
また、各展示ブースに目を向けると、壁にはタブレット端末が設置され、そこに展示されているブランドの情報や商品を検索することができます。

ショーフィールズのウェブサイトでは展示されたブランドの製品がオンラインで購入できるようになっているので、気に入ったブランドをブースで見つけたら在庫があればその場で購入できますし、ショーフィールズのオンラインショップで後日購入することも可能です。


写真:鉄製カミソリブランドhanniのブース
今回訪問時は使い捨てプラスチック製のカミソリが抱える環境問題の解決を目指し、プラスチックフリーの鉄製のカミソリのブランドhanniが有料予約制のシェービングサービスを提供していました。

20分30ドルですが、シェービングサービスを体験した人は全てのhanni商品を20%オフで購入することができます。

こちらのブースに訪れた際に担当していた女性コネクターは、自分やすでにこのシェービング体験した他の顧客のエピソードを交えながら、hanni製品の魅力を語ってくれました。


ショーフィールズ創業者タル・ズヴィ・ナサネルさんがインタビューに答えているポッドキャストでは、


ショーフィールズは何か特定のモノを探しに来るのではなく、好奇心、何かあるかもしれないという興味関心をアンカーし、定期的に訪れてもらえるような店舗と体験デザインにしているといいます。


展示されているブランドは3か月から6か月で入れ替え、キュレーションも一方的にブランド側から顧客に情報を押し付けるような機能や意味のものではなく、相互にストーリーを共有し、紡いでいけるようなことを目指しているといいます


そして常に新たな発見があるよう、ブランドのキュレーション、店舗やブースのデザインを行うとともに、物理的店舗でしかできない"コネクション"、すなわち、ブランドと人間同士の手触り感のある関係性や共感を生むしかけを大切にしていると言います。



しかしながら、デジタルかオフラインかという二者択一ではなく、両者で可能なことをシームレスに組み合わせ、WeWorkの場のようにリテイルという場と顧客体験を効果的にデザインし、様々なブランドを活性化させたいと話しています

https://cheddar.com/media/showfields-co-founder-wants-to-make-brick-and-mortar-easy-for-digital-brands

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Aya Kubosumi ノマドマーケター

コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

s.budo