テキスト・コマースのDirty Lemonがプロデュースした無人実店舗「Drug Store」

店員は誰もいません。タッチパネルと商品のみの実店舗、Drug Store by Dirty Lemon

まずは、どんなお店なのか、こちらの写真をご覧ください。
無人店舗はマンハッタンの南西に位置するトライベッカ地区にあります。看板には「毎日の新聞と冷たい飲み物」とあります。
シンプルですが、どちらかといえば、何のお店か分かりづらい店名ですね。
私がお店に滞在中も、アメリカ人男性1名(若そうな方)、とアメリカ人女性1名(50~60代半ば?)の方が、お店をのぞき込みに来ていました。
男性は私に、「ここ何?」と尋ねてきたので、「健康ドリンクの無人店舗ですよ、1本の値段、高いけど、テキストして買うみたいです。」と質問すると、「Wow!」と言って、去っていきました。。。
では、実際にお店に入ってみましょう。

およそ15平米くらいのスペースでしょうか。ドリンクの陳列ケースと新聞スタンド(看板にあったように、確かに、新聞スタンドがあります:写真左下)、タブレット、持ち帰り用のビニールバッグ、観葉植物、以上です。
ミニマムです。
まず、お店に入ると、何を、どうしてよいのか、戸惑います。
通常であれば、ドアを開けて入ると店員スタッフがいたり、レジがあり、商品を選んでレジに持っていくというスタイルですが、店員もレジもないため、最初に何をしたらよいのか困惑している自分がいました。
普段の実店舗での購買行動の経験を照らし合わせても参照できる経験が見当たらないためでしょう。

カラフルなパッケージが並びます。
ドリンクは9種類で。種類はそこまで多くはありません。
ここで写真を撮って、インスタにアップする人が多いのだとか。インスタ映えするよう、陳列のカラーリングにもこだわっているようです。
ひとしきり健康飲料を眺めた後、タブレット画面の前に行き、表示されている情報を見ることにしました。

1. 欲しいボトルを取ってください(1本10ドル)。
2. あなたが取ったボトルを917.588.0640(電話番号)までテキストしてください。
3. 人生を前向きに進もう!支払いはテキストで完了します。
以上ですね。そして右下にQRコードがあります。

タブレットをいじると、商品のラインナップのページが出てきたので、気になる飲料の情報をチェック。
情報も極めてシンプルです。

さらに画面にタッチしてスワイプしてみると、商品のイメージ写真が表示されました。
情報は以上です。
完全に、言語情報を最小限にし、イメージで顧客に印象付ける戦略といえるでしょう。
以前、何度か、健康や健康食品に関する調査をしたことがありますが、多くの人が合理的な購買理由よりも、イメージで健康関連商品を購買しているという点が印象的だったことを思い出しました。
この健康飲料も、この顧客インサイトに忠実な店舗デザイン戦略をとっている点が秀逸です。

10ドル、、、高い!をぐっと飲みこみつつ、表示されていたQRコードを読み取ると、すぐに上記の写真のようなテキスト・メッセージがスマートフォンに送られてきました。
私が入力する吹き出しに、あとはどのボトルを取ったか、ボトルの名前を入れればよいようです。

ボトルの名前を「rose」とだけ入れてみたところ、3分ほど待っても、うんともすんとも返事が返ってこないので、「I got a bottle of +rose(+roseのボトルを入手しました」と自分で入力してみました。
すると、ようやく、返事がきました。「リンクを訪れて購買を完了させてください。」
ええ、分かりました、が、リンクが一向に送られてきません。
また3分ほど待って何も返事が来ないため、業を煮やして「リンクを送ってください」とテキストメッセージを送りました。

ようやく、リンクが送られてきました。
思ったより、テキストでの会話技術の精度は悪いように感じます。
結局、こちらから、テキストを送って、依頼しなければならないのは手間感があります。

リンクをクリックすると、支払い情報を入力するページに遷移しました。
入力項目はとてもシンプル、ミニマムで、氏名、メールアドレス、カード番号のみ。
通常のオンラインショッピングサイトであれば、住所や年齢、性別などの入力項目が他にあったりしますね。入力項目が多ければ多いほど、顧客は面倒になり、脱落していきます。
ここでは決済に必要な情報のみに限定することで、顧客の購買行動の閾値を下げようとしているのでしょう。
顧客の心理をしっかりと把握して設計された購買画面のデザインです。

決済情報を入力すると、「ご購入ありがとうございます。決済完了のメールおよびメッセージをすぐにお送りいたします。次回以降のご来店の際はこれ(決済情報入力の手続き)は不要です。」という画面が表示され、メールアドレス宛に決済完了のメールが送られてきました。
ここでも、顧客の購買プロセスの手間や心理的な負担を下げるためのデザインが展開されていることが印象的です。

購入完了です!
黒の窓枠にショッキングピンクのボトルが映えます。
ボトルが目立つように、持ち帰りのビニールバッグは透明ベースに白のロゴデザインですね。
Dirty Lemonとは一切書いていないのも特徴です。
「これ何?」と、商品と袋を見た友達や周りの人に思わず言わせてしまうようなデザインです。
Dirty Lemonプロデュース、Drug Storeの何がイノベーティブなのか?
1. インスタ映えする商品・店舗デザイン、ビジュアライゼーション、仕掛けからなる一連の統一されたブランディング
2. 無人店舗での経験したことのない新たな購買体験の提供
3. 無駄を省き、最小限かつ効果的な購買プロセスとテキストによるコミュニケーション
夏の特別編
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