NYノマド 第9回:健康志向を追い風に肉を超える肉、植物性原料のプラントベースミート(オルタナティブミート)は定着するか?!(中編)

19.10.18 10:38 AM By s.budo

わたくし事で恐縮ですが、先日、無事男の子を出産しました。
日本と米国籍を持つテニスの大坂なおみ選手がTOKYO2020に日本登録で出場することが話題になっていますが、米国生まれの日本人も、日本と米国の二重国籍が取得できる様です。


さて、中編では、プラントベースミート市場形成の背景、そして実際に商品を買って試してみた体験をお伝えします。

なぜ、プラントベースミートなのか?

なぜ今ここまでプラントベースミートへの期待や熱が高まっているのでしょうか?

一つにはImpossible Foodsの設立理由、ビジョンでもあった環境問題が一つ大きくクローズアップされています。

NY Timesでは、国際連合食糧農業機関のデータを引用し、人間の活動によって生産された温室効果ガス排出のおよそ14.5%が畜産業関連であり、そのうち、65%が牛(乳牛及び肉牛)からのものであること、そしてBeyond Meatとミシガン大学が共同で実施した試算を紹介したレポートを紹介し、同社の商品であるビヨンド・バーガーは食肉バーガーと比較して、温室効果ガスの排出が90%少なく、エネルギー使用は46%少なく、水や土地への影響もほとんどなく、地球環境に貢献する新たなテクノロジー、商品としてプラントベースミートを紹介する記事を掲載していました。



ちょうどたまたま私もタイムリーな話題で、小泉進次郎環境大臣がニューヨークで開催された気候変動サミットに参加した際に、ステーキ店でステーキを食べたことが、環境汚染を推進するような行動を取っていると批判されているという記事が流れているのを目にしましたが、確かに、欧米では畜産業が地球汚染ビジネスの一つであるという認識があります。
同様に、ビジネス関連のメディアでプラントベースミートのさらに先を行く、Soleinという食品原料の開発についての記事を"Food4.0時代の救世主? 
NASA生まれ、いかなる環境でも製造可能な食料「Solein」"というタイトルで紹介しています。


"「Solein」は二酸化炭素、水、再生可能発電を使った酵母や乳酸菌に似た天然の発酵プロセスによって製造される。小麦粉のような粉末で味も似ているという。
しかし、その成分はタンパク質50%、脂肪5〜10%、炭水化物20〜25%であり、小麦粉とはかなり異なる。
さらに大きな違いは環境負荷だ。1Kgの牛肉を生産するには15,000ℓの水が必要になり、大豆1kgの収穫には2,500ℓの水が使用される。
ところが「Solein」を1kg製造するのに必要な水はわずか10ℓ。さらに農地が不要なので土地効率の面では大豆の生産の10倍の効率性がある。
製造に必要な電力は太陽光などの再生可能エネルギーを使用、生産コストはわずか5ユーロだ。"
環境負荷が少なく、かつ、グローバルな食糧危機を解決するための食品開発は、ビジネスにおいても今後も大きな成長分野として位置づけられるでしょう。


そして二つ目は健康志向、健康的なライフスタイルへの意識やニーズの高まりです。

Beyond Meatは動物性食肉の頻繁な接種は癌のリスクを16%、そして心臓疾患のリスクを21%高めるという研究を紹介し、植物性原料の人工肉が健康に良いとPRしています。アメリカでは健康コンシャスな消費者たちからの支持が得て、こうしたプラントベースミートのハンバーガーといった料理や商品が受け入れられているという点は確かにありそうです。純粋に動物性食肉と植物性タンパク質を比較したらそのような研究結果なのかもしれませんが、ハーバード大学メディカルスクールのウェブ記事では、プラントベースミート、赤身の牛ひき肉、ターキーのひき肉、黒豆のそれぞれのバーガーの成分を比較し、プラントベースミートは環境にはよいが、健康面ではトータルにみると、食品添加物などが含まれる加工食品であるため、一概に健康に良いとは言えないと結論付けています。


実際にスーパーでプラントベースミート商品を買って試してみました
~やはり、ジャンク系に人気?

百聞は一見に如かず、ということで、私も実際にスーパーマーケットに行き、どんなプラントベースミートや植物性原料の人工肉商品があるのかをみてみるとともに、購入して食べてみることにしました。
今回は近所にあるオーガニック系スーパーの代表、Trader Joe's(トレーダー・ジョーズ)Whole Foods(ホールフーズ)のそれぞれの冷凍食品コーナーで販売されている商品を購入し、試食してみたいと思います。


まずは、Trader Joe's(Edgewater店です。

こちらの店舗はそこまで大型店舗ではありません。日本の中型スーパーのサイズでしょうか。

冷凍食品コーナーに行くと、ありました、ありました。

プラントベースミートの冷凍食品は12品ほど。”Meatless~"もしくは”Veggie~”という商品名になっています。
Trader Joe'sは自社オリジナルのPBブランドの商品を多く取り扱っており、プラントベースミートを使ったハンバーガーのパテはプライベートブランドのもののみでした。

この中で、バーガーのパテを試してみるべく、PB商品の"Thai Seet Chilli Veggie Burger"を購入してみました。
価格は3.69ドルです。パッケージには美味しそうなバーガーの写真が載っていますが、実際の中身はパテが4つほど入っているのみです。

写真左から

Trader Joe'sのプラントベースミートの冷凍食品コーナー(筆者撮影)

Trader Joe'sの"Thai Seet Chilli Veggie Burger"パッケージ(筆者撮影)

Trader Joe'sの"Thai Seet Chilli Veggie Burger"パッケージ成分表(筆者撮影)

成分表をみてみます。
パテ一つあたり、150キロカロリー
ブラウンライス、にんじん、ブラックライス、大豆プロテイン、キャノーラ油、ポテトフレーク、たまねぎ、ひしの実、ブロッコリー、赤唐辛子、小麦グルテン、スイートチリソース、シイタケ、大豆、砂糖、しょうが、ねぎ、ごま油、塩、葛、ガーリックパウダー、オニオンパウダー、胡椒、です。

大豆プロテインが肉の代わりになっています。成分からみると、確かに"Veggie"と謳っているだけあり、複数種の野菜がたくさん入っており、野菜だけでできているパテです。


パテはいくつか調理方法がありますが、最も簡単な電子レンジで1分ほど加熱をして食べてみたいと思います。
バンズや野菜類を用意して、パッケージのようなベジタブルハンバーガーを作りたいところですが、このパテだけにフォーカスして食べてみます。

写真にあるように、見た目は平たいつくねのような感じでしょうか。ライスや野菜のみじん切りがところどころ入っています。

さてお味は、、、

うーん。なんと表現したらよいのか難しいですが、肉の味はあまりせず、食感はひき肉でつくったヒジキ入りのつくねの柔らかいようなもので、後味に苦みがあります。
日本のつくね団子やハンバーグになれてしまっていると、全く別物の食べ物であり、断然日本の味に軍配が上がります。
余談ですが、Trader Joe'sのチーズコーナーには、乳製品ではない、ヴィーガンチーズも売られています。ヴィーガンとは動物性食品を排除した食生活スタイルのことです。
このヴィーガンチーズは豆のプロテインを主成分とするようです。また機会があれば試してみたいと思います!

写真左から

加熱したパテ(筆者撮影)

Trader Joe'sのヴィーガンチーズ(筆者撮影)

続いては、Whole Foodsです。


こちらは先のTrader Joe'sと比較して比較的大型店舗であり、生鮮食品、日用品とともに店内で作るお惣菜などのデリ、ケーキやパンなどもあり、イートインスペースも併設した店舗です。


冷凍食品コーナーはかなり広く、グルテンフリーの冷凍食品セクションが存在します。

冷凍棚3列ほどに、プラントベースミートを使った商品や、野菜のみの冷凍食品などが並び、種類もかなり豊富です。


棚を見て特に売れていそうな商品をみてみると、プラントベースミートのバーガーのパテ、コーンドッグ(アメリカンドッグ)、プラントベースミートのチキンレスチキンナゲットなどが売れているようです。

やはり、アメリカの食べ物として定番のバーガー、アメリカンドッグ、チキンナゲットのプラントベースミートバージョンに人気があるのでしょうか。もしくは、定番の食べ物だからこそ、従来の食肉からプラントベースミートに代わっても受け入れられやすいということかもしれません。


Trader Joe'sでバーガーのパテは試しましたので、Whole Foodsのプライベートブランドのチキンレスチキンナゲットに今回はトライしてみたいと思います。価格は14個入りで3.99ドルです。

写真左から

Whole Foodsのグルテンフリー冷凍食品コーナー(筆者撮影)

Whole Foodsのグルテンフリー冷凍食品コーナー2(筆者撮影)

Whole Foodsのグルテンフリー冷凍食品3(筆者撮影)

さて、こちらが商品です。


こちらのナゲットは大豆ではなく、小麦のプロテインを主成分としているようです。

「グルテンフリー、ノーコレステロール、飽和脂肪酸なし、プロテイン源によし」、という表記がヘルシーさを強調しています。


では、どんな成分でできているのでしょうか。


成分表示には、水、小麦プロテイン、パン粉、有機さとうきび糖、シーソルト、イースト、キャノーラ油、コーンスターチ、パプリカエキス、ローズマリーエキス、グルテン粉、バター、セルロースガム、小麦スターチ、豆繊維、豆プロテイン、オニオンパウダー、ガーリックパウダー、セロリ種、などが書かれています。

ほとんどが加工されたプロテイン質でできていますので、鶏肉を使ったチキンナゲットよりも、加工食品感を強く感じてしまうのは私だけでしょうか。


調理方法はレンジではなく、オーブンが推奨されていたため、オーブントースターで温めることにしました。


さて、こちらのお味は?


実物の写真をご覧いただくと、見た目はかなりチキンナゲット感が感じられると思いますが、味も、一口入れたときに鶏肉のチキンナゲットの風味とかなり近いものを感じました。

食感はチキンレスチキンナゲットのほうが均一の噛み応えがあり、噛んでいるとやはり、Trader Joe'sのパテ同様、後味に苦みを感じます。パテよりは、食肉に近い風味がしました。

写真左から

Whole Foodsのチキンレスチキンナゲットパッケージ表(筆者撮影)

Whole Foodsのチキンレスチキンナゲットパッケージの成分表示(筆者撮影)

Whole Foodsのチキンレスチキンナゲットパッケージ調理方法(筆者撮影)

Whole Foodsの加熱済みチキンレスチキンナゲット(筆者撮影)

今回はパテとナゲットを試食してみましたが、味の点でプラントベースミートは、まだ改善の余地があると感じました。


次回の最終編では、総括としてプラントベースミートの市場概観、実際の商品体験を踏まえた考察をお伝えします。

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ビジネス、公的な活動問わず、アメリカのこれらの事例から何かのヒントがお届けできれば幸いです。みなさんからのコラムに関するご質問や、こんなことを聞いてみたい、知りたい!というリクエスト、叱咤激励などなど、24時間365日お待ちしております。ではまた次回コラムでお会いしましょう。

columnist
Aya Kubosumi ノマドマーケター


コニカミノルタ、大阪ガスで行動観察やユーザーリサーチに携わったのち、GOB Incubation Partnersを創業。夫の突然の転職に伴い、東京から3歳の娘と夫とともにNY(ニュージャージー)に移住。ノマドマーケターとして、NYの人々、もの、こと、を日々観察、体験したことを素材に、日本の商品開発マーケターの皆さんと共有したいインサイトを綴ります。

s.budo