「Web3.0」の真髄!?

24.04.23 12:31 PM By s.budo

昨年より生成AIおよびそれに関連する半導体開発が市場を席捲していますが、今回は、一昨年に注目された「Web3.0」をAIブームの視点より考察してみます。

経済産業省の「大臣官房Web3.0政策推進室」

Web3.0関連の事業環境整備の検討体制の強化を目的に、2022年7月に「大臣官房Web3.0政策推進室」が設置されましたが、「経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性」資料でWeb 3.0は、「ブロックチェーンによる相互認証、データの唯一性・真正性、改ざんに対する堅牢性に支えられて、個人がデータを所有・管理し、中央集権不在で個人同士が自由につながり交流・取引する世界」と説明され、以下の様な経済効果が期待されています。
①グローバルに稼げる「価値創造経済」への転換
  • グローバル展開を前提とした挑戦が次々と生まれる経済
  • 誰もが価値創造に貢献し、その見返りを受けられる経済
  • クリエイティブ産業大国としての日本復活

②社会課題解決型の新たな市場の創出
  • 地理的制約の克服による自由で豊かなライフスタイルの実現
  • 資源制約に縛られない新たな成長フロンティアとしての循環経済の実現

③産業活動の最適化・強靱化
  • より安く、早く、安定したサービスの提供
  • サプライチェーン透明化による効率性と強靱性の同時実現
  • サイバー攻撃に強くデータが自由に流通する経済の実現

Web3.0は、Web1.0→2.0の次に到来するITの発展段階ですが、Web3.0は換言すれば「時間と空間を超えて、あらゆるデータが有意味に連動、分析され、情報の質と価値が指数関数的に向上し、ダイナミックに流通する世界」を可能とすることで、個人に企業に、そして社会にパラダイムシフトを起こすドライバー(けん引役)と言えます。図:The progression of the scientific methodより転載

5G

Web3.0と両輪で新たな経済社会をけん引するもう一つの技術が5Gです。PWCは「Five industries where 5G will make the most impact by 2030(2030 年までに 5G が最も大きな影響を与える5つの業界)」で、次の様に5Gを展望しています。(抜粋翻訳)


【重要ポイント】
  • 2030年までに、世界の GDPは1.3 兆ドル(約170兆円)成長
  • この成長の大部分はヘルスケア、スマートユーティリティ、および消費者向けメディア
  • 企業にとって戦略的アプローチによる適切な活用が不可欠

【5Gを活用して価値を生み出す5つの業界】
  • 健康管理:コネクテッドヘルスケアエコシステムの実現
  • スマートユーティリティ:スマートメーターとスマートグリッドによるエネルギー管理の強化 
  • 消費者とメディア:オンラインメディア、オンライン購入の加速 
  • 工業生産:自立型ロボットによる省人化
  • 金融業務:AIベースのアドバイスサービス

2030年までの国別の経済的影響予測(2019年時点)では、米国が4,840億ドル(全体の37%)、中国が2,200億ドル(17%)と2国で過半数を占め、以下、日本760億、ドイツ650億と続きます。なお、2019年後にCOVID-19パンデミック、米中のデカップリングによる5G通信機器の輸入規制等、社会情勢やグローバル経済の環境が大きく変化しており、各国における5Gの普及、活用は予測以上に進展している可能性があります。

5Gは換言すれば「Web3.0を始め、ITの進展で爆発的に増大するデータを循環させる動脈」です。

データサイエンス

10年前にビッグデータで注目され5年前にはAIで注目されたデータサイエンスが、Web3.0のこれから10年を大きく左右すると予想されます。データサイエンスは、ご存じの通り、大量のデータ収集、データ変換、データ分析を通じてデータから有意味なパターンを抽出する一連のプロセスです。

因みにビジネス特化型SNSのLinkedInによれば、データサイエンスは2017年に最も成長した職種の 1つであり、2020年にはデータサイエンスの職種が米国の3つの最高の職種の1つにランクしました。自然の解明に科学が様々な実験データを扱った様に、Web3.0による社会の再発明にデータサイエンスはさらに重要性を増してきます。

デジタルマーケティング

マーケティングにおけるWeb3.0に関してGartner Digital Matkets の「How Does Web3.0 Impact Digital Marketers?(Web3.0がデジタルマーケティングに与える影響)」では、Web3.0の核となる技術を3つ定義しています。

  1. 機械が人間と同様にデータを理解できるようにインターネット上のデータを整理するセマンティックWeb技術
  2. パターン認識や意思決定など、通常は人間が行うタスクを学習して理解する人工知能技術
  3. テキストから正しい意味を抽出し人間の言葉を理解する自然言語処理技術
Web 3.0は、ユーザーが自分の個人データとプライバシーをより詳細に制御できるようにし、ユーザーフレンドリーなインターフェース、よりパーソナライズされたインタラクティブなエクスペリエンスを提供可能にします。Gartnerの調査によるとデジタルマーケターの約84%は、「顧客一人ひとりに応じたコミュニケーション」、「顧客データおよび関連データに基づく顧客インサイト分析」、「顧客ごとに固有のエクスペリエンスを提供」を通じてマーケティング機能が向上すると回答しています。

Web3.0は、約5年前に日本の政策課題、未来社会のコンセプトとして提唱された「第4次産業革命」や「ソサエティー5.0」を実現するITアーキテクチャーとして機能するだけでなく、社会の意識をも革命する潜在性を秘めていそうです。

s.budo