さて、第三章では、攻めているオンラインビジネス企業の筆頭である、Amazonによる、Amazon Goの店舗でショッピングをした私の体験をご紹介させていただきます。
未来のコンビニのようなお店

Amazon Goがニューヨークに初めてオープンしたのは、今年2019年5月7日、金融街とハドソン川の間に挟まれ、ワンワールドトレードセンターにも近いBrookfield Place mallというオフィス&商業コンプレックスの中です。
オフィスビルとしては、アメリカンエクスプレス社やタイム社などの大手企業が入居し、下層階にはフードコートやスターバックス、レストラン、Louis Vuitton, Gucciなどの高級ブランドや人気ショップが軒を連ねる施設です。
オープン前にAmazon GoのNY初出店について書かれた記事には、"未来のセブンイレブンのようなお店"という説明がありましたが、およそ120平米強のスペースに、日本のコンビニのような品揃えの店舗となっています。
現在ニューヨークには上記の店舗に加え、ロックフェラーセンターの近所などミッドタウンに2店舗ありますが、2021年までに3000店舗オープンする予定とも報道されています。
今回はニューヨーク1号店であるBrookfield Place mallの店舗を訪問してきました。

改札のようなゲートがお出迎え、Amazon Go

"Amazon Go"!
スーツにシャツを着たオフィスワーカー、ビジネスマンが行き来するエリアで、日本にもオフィスビル内にコンビニがありますが、それと同じような雰囲気です。

異なるのは店舗の入口。
電車や地下鉄のような改札ゲートが設置されており、ここにスマートフォンをかざして入退店するシステムになっています。

具体的にはAmazon Goのアプリをスマートフォンで開き、自分の個人認証のためのバーコードを表示させ、改札の上部にある読み取り部分にかざします。
私が入店した当時は、Amazon Go専用アプリではなく、AmazonアプリにあるAmazon PrimeのページからAmazon Goのバーコードを表示させることができましたが、現在はAmazon Goアプリに移行しているようです

オフィスビルにある日本のコンビニのような品揃え



エナジードリンクに朝食 ~ビジネスマン、ビジネスウーマン向けの品揃え

ドリンクコーナーはソーダ、ジュースにお茶などももちろんありますが、目を引いたのはエナジードリンクの棚割りの多さ。
日本でもおなじみのレッドブル、モンスターなどが存在感を示しています。
日本でもエナジードリンクコーナーは増加していると思いますが、アメリカのオフィス街でも需要が高いのでしょう。
もちろん、コカ・コーラやペプシなどのソーダ類もかなり売れていました。

朝食コーナーの棚もあり、ヨーグルト、シリアル入りのヨーグルト、ベーグルなどが陳列されていたようですが、売れているものも多く、棚が空になっています。
朝食用の商品の補充は午後の時間帯ではしないのかもしれません。
品切れになった棚に、品切れ中を表示するタグが置かれているのが分かりますが、このタグの表示のデザインは"SO GOOD, IT'S GONE"です。「大好評で品切れです」という感じでしょうか。
この表記もポジティブでいいなあと感じました。
以前のコラムでも紹介した、行動経済学の損失回避の心理をくすぐる表現ですね。
とてもシンプルな店舗ですが、店舗やサービスデザインの一つ一つの細かい点にAmazonのオンラインリテイルの経験やリソースがつぎ込まれてデザインされているのではと感じます。
個人向けだけでなく、オフィス向け商品の品揃えも

ビジネスマン、ビジネスウーマン個人向けの需要に対応した商品だけでなく、オフィスや会社のイベントに対応したような商品も陳列されていました。
牛乳やアーモンドミルクなどのバックはオフィスのコーヒータイムなどに利用されたり、

ハムやスモークサーモン、チーズなどのおつまみまで豊富にありますが、こちらはオフィスでカジュアルに軽く飲むようなイベントがあるときに登場しそうです。

店舗内の壁周りは全て冷蔵系の棚となっており、食品類が陳列されていました。
中央の棚は通常の棚になっており、スナックやチョコレート、ガムなどのお菓子やドライフルーツなどがメインに陳列されていましたが、ほんの少しですが、オフィス生活に必要と思われる消耗品類も置かれていました。
洗剤、電池、ハンドクリーム、オーラルケア、薬品などです。
ミニマムな決済システムとオペレーション

一人は入口の顧客対応スタッフ、もう一人は、Amazon Goをオフィシャルに見学に来たと思われる人たちの説明スタッフ、そして商品補充スタッフです。
日常的に配置されているのは、顧客スタッフと商品補充スタッフの2名だと思われますので、このオペレーションも日本のコンビニに近いかもしれません。

肝心の"No Line. No Check out."の仕組みですが、
バーコードを入口で読み取り、個人の入店を識別すると、あとは天井に設置されたたくさんのカメラが顧客のショッピング行動を撮影し、商品を手に取るとその記録データを元に購入の有無をカウントし、退店ゲートを出ると自動的に精算されます。
天井のカメラでは、来店客の行動を検知するモーションピクチャー、そして手に取った商品を特定するオブジェクト認識などの技術が導入されているようです。

商品を5点以上など、かなり多く購入する人は少なく、多くても2-3点でしょうか。
レジ袋は陳列棚に設置された紙袋のみ。
たくさんの商品を買うような想定はしていないようです。
私がショッピング中も、お洒落なジャケットを着た若いビジネスウーマンがガムを棚から手に取り、ジャケットのポケットにポンと入れて颯爽と退店ゲートをくぐって去って行きました。
その後ろ姿を見て、新しいショッピングスタイル文化の息吹をつくづく実感したのでした。

私といえば、カゴもないので、Amazonのオリジナルチョコレートとドライフルーツを手に取り、しばらく商品を手に持ったまま店内をウロウロしましたが、天井のカメラで監視されているような雰囲気や、レジでの精算不要、レジ袋に入れてもらわずに退店するスタイルになんだか慣れず、落ち着かないような心持ちで、そわそわ、きょろきょろしながら退店ゲートを通り過ぎ、お店を後にしました。
レシートが約2時間後にメールで到着

さて、次回の最終章では、Amazon Go店舗のサービスデザインの総括、そして、オンラインリテーラーたちが今なぜ、実店舗を仕掛けているのかについて、二章のDirty LemonによるDrug Storeでの考察も踏まえて検討し、未来の店舗について思考を巡らせてみたいと思います。
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