戦国時代は、「私」の追求が武力をもってなされた下剋上の時代であった。またこの時代に有効なのは、本人の実力である「器量」だけであった。
下剋上とは、従来の権威・従来の秩序を否定することである。しかし戦国時代においても従来の権威・秩序が完全に否定されたわけではない。幕府や、将軍を背後にもつ守護職の権威はなお存続していたからである。ただし、従来の権威は存在していたのにもかかわらず、もはや人々の行動を規制することは不可能に近かった。
ではこの時代に新しく登場してきたものが何であったかというと、それは個人の実力である。当時の表現でいうと、「器量」に対する評価であった。そしてまた下剋上をしのぐには、従来の権威...